感情が高ぶった時に、人は何故涙を流すのか? その問いへの答えを探求した人がいる。
生化学者の
ウィリアム・フレイ二世(William H. Frey II)は、涙は感情的緊張によって生じた化学物質を体外へと除去する役割があるのだろう、という
仮説を提案した。この
生理学者は自身の仮説の妥当性を調べるために実験をしてみた。実験の内容としては、被験者に、いかにも涙を誘う
映画を見せて収集した涙と、同じ被験者にタマネギをむかせて収集した涙の、成分の比較をするというものであった。80人あまりの被験者の涙の比較は(この時点の実験で用いられた検出能力でも、少なくとも)感情による涙は、刺激による涙よりも、より高濃度の
タンパク質を含んでいるということを示していた。フレイはその実験内容を含む著書を1985年に出版している。
[『まだ科学が解けない疑問』ジュリア・ライ、晶文社1991年、p.60-63。] [Crying: The Mystery of Tears, William H. Frey. Winston Pr, 1985.] [『涙―人はなぜ泣くのか』 ウィリアム・H・フレイII, 日本教文社, 1990年。 ]
この実験により、感情と涙の成分には何らかの関係がある、ということは示され、フレイの仮説をおおよそ裏付ける内容となっている。そしてこれは、「泣きたい時は思い切り泣くことで様々な感情を洗い流すがいい」といった通念が、生化学的観点ともそれなりの整合性がある、ということも示しているようである。
ただし、フレイの実験では、様々な種類の感情とタンパク質の関係が明らかにされているわけでもないようであり、感情と涙の関係は興味深いテーマとして存在しつづけているようである。