植物群落は時間と共にその種の構成を変えてゆくものと考えられ、次第に背の高いもの、構造の複雑なものになると考えられる。このような変化を
遷移というが、森林はそのもっとも発達したものと見なせる。さらに森林の中でも陽樹が林冠を占めるものから陰樹のそれに変化すると、それ以上はその種構成はさほど変化しないものと考えられる。このような状態を
極相(極相林)という。しかし森林の変化はそれで終わりではなく、さらに高木が大径化し、林内に落葉や枯死木が堆積、それが
分解されて深い
土壌を形成するなどの発達を遂げる。また、大木にはうろが生じるなど若齢林には見られない構造も形成されることから、
動物相にもさらに変化がある。このようなことから、長期にわたって極相林が維持された環境は、より豊かな動物相を持つものであり、しかも期間をかけて形成されただけに、これを破壊した場合、その完全な回復には大変な時間がかかる貴重なものであると考えられる。このような森林を原生林という。
人の手が一度も入ったことのない森林を原始林といい、さらに貴重なものと考えられるが、実際には人手は一度も入らない場所などほとんど存在しないから、まとまった伐採が行われたことがない、程度で考えるべきであろう。原生林との区別も明確ではないが、元もとそこに原生林的な森林があった場合、それが伐採されていても、その後の回復でほぼもとの状態に戻り、十分に時間がたっていれば原生林と呼ぶ。実際には
抜き切りがあった場合にはそのことを確認できないことも多い。
なお、
林学的観点からは、老齢林(極相林や原生林)は成長速度が遅く、木材生産の速度が遅いから不経済であり、ある程度の抜き切りをして若い木を増やした方が合理的との判断もある。また、
地球温暖化に関わって森林を
二酸化炭素固定能で判断する立場からは、やはり老齢林はその速度が遅く、また現存量の増加が少ないことからやはり若齢林化すべきとの判断もある。
生物多様性の観点からも極相林はその手前の状態に比べて種多様性が低いとする声がある。しかし、これらはいずれも原生林の特徴と重要性をそれぞれある一面からしか見ていないための判断である。
森林は世界の陸地の約33%を占めており、2000年現在で約39億haの森林が存在すると見積もられている(1993年時点で約42億ha、
国連食料農業機関「世界森林白書 2001年」(2001年ローマ刊)推計値)。そのうち原生林は約95%を占める。1970年時点から原生林のおよそ80%には何らかの人手が加えられている。