かつて、原クジラ類は、
歯の特徴に基づいて原始的
有蹄動物の一グループである
メソニクス目から進化したと考えられていた。しかし近年では、新機軸による
分子系統学と伝統的な
形態学がそれぞれにもたらす新しい知見を容れて、
偶蹄目の
カバ科と姉妹関係にあるとの見方が支配的になった。原クジラ類の祖型(カバ類の祖型でもある)は、
白亜紀後期あるいは
暁新世の早期のうちに、現在「偶蹄類」と呼ばれている偶蹄動物の原始的なグループの中から
分化したと考えられる。分子系統学によれば、のちに
ラクダや
イノシシに進化する系統に比しては、彼ら(
鯨凹歯類)は遅れて分岐した。しかし、
反芻類(絶滅した原始的反芻類と、現存する
真反芻類[真反芻類(真反芻下目、)は、ジャコウジカ科・シカ科・キリン科・プロングホーン科・ウシ科の総称。])につながる系統よりは早い時期に分岐したとされている。その後クジラの祖先はカバを生み出す系統とも分かれ、海棲の哺乳類としての進化の道を辿ったものであろうとされる。
大部分の原クジラ類は後肢をいて、現生クジラ類とは明らかに違っている。始原的な種は頑丈な
四肢を具えた完全な陸棲動物であったと考えられ、現在最もそれに近いと目されているのは最古のクジラであるとされ四肢を持つ動物でもあったパキケトゥスである。海進の時代である始新世を迎えて、原クジラ類は、暖かく広大な
浅海である
テティス海を中心として大いに栄え、多様かつ急速に進化していったと見られる。四肢は
鰭(ひれ)へと変わり、陸棲向きである
三半規管は退化して海棲向きである
骨伝導構造を持ったクジラ類特有の
耳骨等がそれに取って変わる。この進化の流れは非常に速く、同じ世の後期初頭には、初期のクジラ類とは著しく異なるレベルでの
適応を果たし長大な体躯を持つ
バシロサウルスの段階にまで達した。すなわち、わずか800万年ほどの短期間で、クジラ類は陸棲から海棲という全く異なる環境への適応プロセスを基本的に完了していたことになる。
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パキケトゥス :約5,300万年前に生息、体長約1,8mとされる。
鯨偶蹄目・原クジラ亜目・
パキケトゥス科に属し、
パキスタンで発見された。長い尾を持ち、陸上の哺乳類としての四肢があり足先は
蹄の形状をしている。内耳骨の全体的な形状はクジラに似ており、骨などの厚みから水中での骨伝導による聴覚を持っていたと考えられている。また内耳骨の一部である
砧骨が偶蹄目の特徴を持っているとされることから、初期鯨偶蹄目から分岐、鯨になる途上の生物であると考えられている。