現生のクジラ類は、ヒゲクジラ亜目と
ハクジラ亜目に大きく分かれる。ヒゲクジラ類は歯をもたないが、上顎から生えた「ひげ板」または「
鯨鬚」(くじらひげ)と呼ばれる器官を使って
オキアミや
コペポーダ等の
プランクトンや小魚等の小さなエサを大量に濾しとり、食料とする。主に
プランクトンなど浮遊性の生物を捕食するが、
イワシ等の小魚(基本的にその海域に多い
群集性魚類)の他に
イカなども捕獲された個体の胃から確認されている。これらの魚などはほとんど無傷であり、髭板はあくまで濾過するための器官であることは明らかである
[『哺乳類の進化』 219頁]。これらの食性は種や生息域によっても異なり、
コククジラのみは底生生物を捕食することで知られる。(
濾過摂食を参照)
鯨髭以外のハクジラ類との差異としては、外観上ではハクジラ以上に頭部が大型化し首が短縮している。噴気孔は二つ。喉に多数の襞を持つ。現生種では最大の動物である
シロナガスクジラが含まれる様に、ヒゲクジラは全体的に大型化する傾向がある、などである。
[『絶滅哺乳類図鑑』 123頁]また皮下の形態では、
メロンを持たず、また音を発するための器官である
発声唇を持たないため、高周波
エコロケーション能力を欠く。ただし低周波音を発し、そのエコーを聴いて遠方の地形を探るという事を行っているとされる
[『鯨類学』 148 - 149頁]。
上顎骨は
鼻孔が頭頂部へ移動した事にともない
テレスコーピングと呼ばれる形態を示すが、伸長した上顎骨は
眼窩の下を通り(ハクジラ類は上)、鯨髭に広い付着部位を与えている
。また、頭骨の形態は左右対称となっている(ハクジラは左右非対称)が、これは高周波エコロケーションに特化した機能を持たないためであろう。現生のクジラ類では
耳骨が頭骨から遊離しているが、ヒゲクジラはハクジラに比べて有利の度合いが低く、骨の壁に囲まれている。また、ハクジラでは分離している耳骨の構成要素、
耳周骨(
蝸牛などを収めた骨)と
鼓室胞(
耳小骨を収めた骨)が癒合している。
[『鯨類学』 11 - 13頁]これと関連して、ハクジラは下顎に脂肪組織を持つがヒゲクジラには存在しない。これはハクジラは下顎をエコーを聴くためのピックアップとして用いる適応とされるが、ヒゲクジラは下顎を介して音を聴く事はしていないと推定される。
[『鯨類学』 14頁]